片山滋子さんの個人大賞

以前つくったWebサイト本の記憶での企画「個人大賞」に頂いた投稿を転載致します。

【個人大賞とは】あなたにとって「一番」の本は何ですか。皆がそれぞれ一番お気に入りの本を一冊ずつ持ち寄ったら、きっと素敵な場所ができあがるはずです。個人大賞はそんな「一番」の集う場所。実名制です。

『Great Expectations』(Charles Dickens)

Great Expectations (Penguin Classics)

「大いなる遺産」(ディケンズ)はキンドルにてダウンロードし(古典は主に無料です!)その後かなり永い間放置していましたが、最近やっと読了しました。

英文です。ですから、部分的に、理解するのに難しい古文体やら語句表現も数多かったですが、内容はとことん人間観察し尽くした洞察力が凄まじく、又ユーモラスでありながらブラックでもありあっぱれな文章で面白く思わず引き込まれて行きます。声を出してクスクス笑ってしまう所も数多くありました。19世紀の生活習慣や食事風景など、目に浮かんで来ては心が温かくなります。

あらすじ。イギリスのある貧しい沼地で育った孤児の少年が姉夫婦に育てられる。ある日、謎の贈与者が現れ、莫大な財産を遺されます。ロンドンに送られて紳士として教育を受けるが、数奇な運命に翻弄されるという少年ピップのお話です。

又、ある富豪の変わり者おばあさんの養女、エステラという高慢で我が儘な娘に恋をする。階級意識が高くピップを見下してばかりいるこの少女の虜になります。延々綴られる恋心もこの本の魅力です。(ディケンズ自身に好きな女性が居り、成就出来なかったという哀しい昔話があるようですが、当時の恋心を再生してるのではないかと想像します。。)

また、私がこの物語の中で最も好きだったのは、ピップの義理の兄であるジョーです。彼は本物の聖人です。貧しく教養も無いが高潔で最も美しい心をもった優しい人です。もう一人、地味だが心優しく穏やかな幼なじみの少女ビティが居ます。ピップの人生には色々あったが、このような真に高級な人達に可愛がられた事は彼の財産だったのではないでしょうか。まぁそれがこの本の主題なのでしょう(ネタバレになってしまい失礼しました)。

(片山滋子/40代/自営業)
2013年7月31日