織原暉さんの個人大賞

以前つくったWebサイト本の記憶での企画「個人大賞」に頂いた投稿を転載致します。

【個人大賞とは】あなたにとって「一番」の本は何ですか。皆がそれぞれ一番お気に入りの本を一冊ずつ持ち寄ったら、きっと素敵な場所ができあがるはずです。個人大賞はそんな「一番」の集う場所。実名制です。

『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

「蜂蜜パイ」は、『神の子供たちはみな踊る』に収録されている短編小説である。

村上春樹の作品には、3角形の関係や4角形の関係、5角形の関係が登場する。しかも、それらは恋愛や友情のバランス感覚を含むかなり密な関係性である。

「蜂蜜パイ」では、淳平、小夜子、高槻、沙羅という4人の登場人物が、移りゆく状況の中で、関係性の形状を変えながら、関係を築いていく。

受動的な姿勢で、自分に自信の持てない淳平、サッカー部のキャプテンも務め、リーダーシップの取れる高槻、知的で穏やかで周りのことを気遣える小夜子といったそれぞれの登場人物の性格がどのように3人の関係性に影響しているかは見所の一つである。

また、沙羅は、小夜子と高槻の間に生まれた子供であるが、彼女の存在は、4人の関係性を大きく変える。

「蜂蜜パイ」は、人間関係のバランスを保つ受動的な義務感と能動的な義務感の大きな違いを深く考える機会を与えてくれる、そんな内容であると感じた。

(織原暉/20代/大学生)
2013年5月23日