川野瑞季さんの個人大賞

以前つくったWebサイト本の記憶での企画「個人大賞」に頂いた投稿を転載致します。

【個人大賞とは】あなたにとって「一番」の本は何ですか。皆がそれぞれ一番お気に入りの本を一冊ずつ持ち寄ったら、きっと素敵な場所ができあがるはずです。個人大賞はそんな「一番」の集う場所。実名制です。

『落下する夕方』(江國香織)

落下する夕方 (角川文庫)

8年間付き合っていて同棲していた彼 健吾が、新しく好きな人が出来たから、と言って出て行ってしまうお話。出て行ったと同時に、健吾が新しく好きになったという女の子 華子が、なぜか自分の家に転がり込んでくる。しかし主人公にとっては、自分1人で暮らすよりも華子と暮らす方が、まだ自分にとって好きな人である健吾と近いことになるので、一緒に暮らすようになる。好きな人が自分と同棲している女の子に会いにくる日々。その過程で少しずつ時間をかけながら、主人公は失恋していく。

好きになった相手に対して、心の底から大事にしたいという感情を抱いてしまった人間の心情を、正確に感じられる表現で描いている所が好きな本です。また、華子がとても不思議だけど心が美しくまっすぐな女の子で、読んでいて安らかな気持ちになります。

江國さんは、格好悪い人間の心情を包み隠さず書いているのに、とても綺麗な言葉でそれを表現する人で、文章を読んでいるというよりも、静かな美術館で美しい絵画を眺めているような気分にさせてくれる人だと思います。もしくは風が心地よい原っぱに来たような気分にさせてくれる人。

ちょっと一息つきたい時に、静かで居心地の良いところへワープさせてくれる感じが好きです。

(川野瑞季/20代/大学生)
2013年5月21日

中津賀国次さんの個人大賞

以前つくったWebサイト本の記憶での企画「個人大賞」に頂いた投稿を転載致します。

【個人大賞とは】あなたにとって「一番」の本は何ですか。皆がそれぞれ一番お気に入りの本を一冊ずつ持ち寄ったら、きっと素敵な場所ができあがるはずです。個人大賞はそんな「一番」の集う場所。実名制です。

『われ笑う、ゆえにわれあり』(土屋賢二)

われ笑う、ゆえにわれあり (文春文庫)

哲学、という言葉を聞いて、みなさんはどのようなことを思い浮かべるのだろう。ソクラテスだったりプラトンだったり、はたまたカントかデカルトか、ショーペンハウエル大先生かと、堅いカタカナの名前ばかりが出てきて、よほどの変な思春期を送っていない限り(私は送っていたけれどw)、少し硬いイメージを持つかもしれない。

では、笑い、と哲学、それに東大、とか文学部教授とか、はたまた女子大の教授なんていう単語も混ぜてみようか。そうするとどうだろう。急に柔らかい、というよりどちらかというと皆さんは違和感を持ってしまうだろう。

実は、この土屋賢二という作家、いや、大学教授、いや、大法螺吹きは、そんな哲学と笑いという未だ見たことのないブレンドを、週刊文春という見たことのある雑誌でやってのける、すごく変わった人なのである。

『論理を使った禁煙法』、『カツカレーダイエット』、そして『女に叱られないで生活するにはどうすればよいか』など、ツチヤ先生の「そんな訳ないだろ、ハハハハ」としか思えない詭弁の数々を笑い飛ばしていると、ふっと「もしかしたら僕たちが生きているこの今の考え方の方が間違っているのかもしれない。」という疑いが芽生え、最後には何故か「テツガク」させられてしまう驚異の一冊。

まずは一冊買って笑ってみてください。いや、読まなくてもいいから買ってください。どちらかというと僕がこんな本を読んでいると皆さんに知られたくないから、黙って店のレジに出してそのまま家で鍋敷きにしてください!

何も考えずに笑って読めるのに、笑った後にすっかり考え込んで、次のツチヤワールドを追いかけ、気が付くとあなたもすっかり気分は哲学者に!とある哲学者と理解のない助手と、毒殺しようとする恐怖の妻との衝撃の戦いを綴った2Dスペクタクルバトル!!眠い夜におすすめです。(よく眠れるから)

(この紹介文の内容は、すべて本文に出てきます。信じられないと思いますが、そういう本です。)

(中津賀国次/20代/大学生)
2013年5月20日